第1段階、原始反射、生後の色の認識の始まり
生命を維持し成長していくために全ての子ども達に生まれながらに備わった反射能力です。モロー反射(音や光に反応し、びっくりして抱きつこうとする反射)、吸啜反射(新生児の口に手を触れると吸い付いてくる反射)、バビンスキー反射(足の外側をさすると足の指を開き、上に向けて指全体を反らす反射)、歩行反射(赤ちゃんの両脇を抱え身体を前に傾けると両足を前に出して歩きだそうとする反射)などおよそ30数種類があります。これらはみな脳幹や小脳レベルで働く〈無意識の反射運動〉で、赤ちゃんが順調に成長していくためには欠かせない反射能力です。
乳児の「色の認識」に関する反射=乳児が白黒以外の色の認識ができるようになるのは、生後3・4ヶ月くらい経ってからです。それまでの赤ちゃんの眼球には白黒を認識する桿状細胞は働いていますが、カラーを識別する錘状細胞はまだ働いていません。ですから生まれた赤ちゃんのお祝いにとメリーゴーランドなどカラフルなおもちゃを飾ってあげますが、乳児はまだそのおもちゃに反応することはできません。
そうした色彩豊かなものより白黒のもの、例えば白黒模様のパンダのぬいぐるみや、20センチ四方のカードに大きな黒い丸(お母さんの乳首に見える)や白黒のタータンチェック模様、モザイク模様などを描き、それを赤ちゃんの目の前で上下・左右・斜めにゆっくりと動かしてあげると、次第にそれを追視するようになります。それは視力のみならず目の機能(ビジョン)の発達にとても効果的な乳児期の働きかけです。
5・6ヵ月以降になったらカラフルなものを認識できる錐状細胞も働くようになりますから、メリーゴーランドを吊り下げてあげるなど、色彩豊かなものを見せてあげることは原始反射の解消や視力・視覚(ビジョン)の発達・脳の発達に効果的な働きかけになります。
原始反射はいずれも成長するにつれ生後8か月~2歳頃には自然に消失していき、無意識の反射から次第に意識の下で起こす姿勢反射(随意反射)能力に発展していきますが、時折小学生になってもいくつかの原始反射を抱えたままの子どもがおり、それが原因でその後の発達不安や運動不安などを抱えることも時としてあります。
◎原始反射を残したままだと起こりうる問題
自分の意志に沿って身体を動かそうとする脳や身体機能が成長するにつれ、原始反射は自然に消滅していきますが、それまではとっさの反射行動や自分の意志に沿って自らの身体を動かしたり、自由にコントロールがしにくい。目的や自分の意思どおりに身体の動きを制御しにくいために瞬時の身体のコントロールができにくい。また目的に沿った身体の動き、コントロールできないため周囲の状況に合わせての共同行動・団体行動がとりにくい為に非難されやすい。人や物との距離感が採りにくく、周りに誤解されたり物に良くぶつかったりやすい、次の行動に移行するのが遅くなる、などなどの問題を起こす傾向があります。
◎原始反射を解くためにこの時期欠かせない働きかけとしては、全身のマッサージ。身体の寝返りや反転。ゴロゴロと転がるローリング。「高い、高い」など体の上下運動。抱っこをしてゆらゆらとブランコのように揺すったり、ぐるぐると回転したりしてあげる。赤ちゃんを抱きかかえたまま赤ちゃんの頭を下に下げ、「逆立ち状態」にする、など 「少し乱暴気味な働きかけ」が効果的です。「じっと静かにおとなしくさせておく。」
「長い時間、ベビーサークルに入れたり、ベビーベッドで寝かせたままにしておく。」などは赤ちゃんの原始反射の解消を遅らせてしまうことになり、あとあと大きな発達問題に繋がりかねません。