子育て知恵袋(第7回)

妊娠5週目くらいになると胎児の脳と脊髄の元となる神経管が膨らみ始め、8週目ころには脳と脊髄の神経細胞の約80%が完成し、最終的には140億と言われる脳神経細胞(ニューロン)が形成されます。

140億の脳神経細胞は一つ一つの単体では何の働きもしませんが、環境からの刺激を受けていくことで神経細胞の樹状突起からシナプスが発生し、そこから軸索が伸びていき、周りの脳細胞との結びつきを始め 、次第に脳回路(ネットワーク)が形成され情報の伝達が可能になっていきます。そのシナプス造りは生後3歳前後でピークを迎え、その後そのスピードは徐々に緩やかになり、6歳前後には一応の終焉を迎 えると言われますので、6歳就学を迎える頃までに出来るだけ沢山の良質の刺激や愛情を伝え、質の良い脳回路を造り出してあげることでその後の脳全体の成長、特にそのスタートになる脳幹・大脳基底核や小脳など生命の脳・運動の脳の成長にとって決定的に 重要になっていくことが分ります。胎児期の羊水の生理的状況や外界からの音の刺激、更には両親の胎児への愛情の伝達や期待感、更に生後の運動刺激や環境からの情報・刺激などが徐々に空白の遺伝子=RNA遺伝子に刷り込み(プリントイン)がされていき、生命機能をコントロールする脳幹や大脳基底核を始めとして全ての脳の成長を左右し決定づけていくことになります。

特に強い刺激になってRNA遺伝子に刷り込み(プリントイン)されていくのが両親、特に「母親の胎児に向けての愛情の伝達と言葉かけ」です。

「赤ちゃんが出来た、良かった!嬉しい!」、「会えるのが楽しみ!」など妊娠を喜び歓迎し、出産を待ちわびる思いは羊水の状態を良くし、必ずや脳幹や大脳基底核など生命の脳の成長に確実に良い影響を与えていく筈です。

逆に「しまった!妊娠しちゃった。今回は諦めようか?!」など新しい命の誕生を歓迎しない思いは必ずや羊水の状態を濁し、「生命の脳」の成長に悪い影響をあたえ、ひいては赤ちゃんの生後の発達不安や障害につながってしまう恐れは十分に考えられるという説もあります。実際「しまった!妊娠しちゃった!」などと両親が思うだけで胎児が激しく痙攣(けいれん)する様子などが胎内を映す映像などで見ることが出来ます。     

医学的な問題で、止むにやまれずに新しい命の誕生を断念せざるを得ない場合などを除いて、新しい生命の誕生に決定的な障害となるようなマイナスの思いや言葉は厳に避けなければならないことがこのことからも分ります。

こうしたことからも「胎教」が持つ大きな意義・重要性が痛感されます。「胎教」と言うと胎児のころから言葉や知識を教え、「知能の高い子」を育てるためなどと捉えられがちですが、それが主な目的ではありません。その大切な目的は胎児に向けた「愛情の伝達」です。新たに芽生えた生命の誕生を喜び、祝福する「愛情の伝達」が主な目的です。その結果穏やかな出産や脳幹・大脳基底核など生命の脳の確かな成長の エネルギーになっていき、その後に続く大脳辺縁系や大脳新皮質など脳全体の健全な成長に繋がっていくものと思われます。

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